子宮頸がん予防ワクチンQ&A

20.
英国の副反応がワクチンとの因果関係と証明されるのは、どのような過程でどれほどの年月を必要としますか。

 英国での医薬品と医療製品の規制はThe Medicines and Healthcare products Regulatory Agency (医薬品・医療製品規制庁、MHRA) が担当しています。MHRAは英国で用いられる全ての医薬品とワクチンの安全性について継続的にモニターしています。その方法の一つに“Yellow Card Scheme”があります。医療関係者も、一般市民も、薬品、ワクチン、生薬などによる副反応が疑われる場合はどんなときも、イエローカードスキームを用いて報告することが強く推奨されています。

 英国で疑われる副反応は5つのグループに分類されています。
1:注射部位と直接関わるもの(注射部位反応)
2:アレルギー反応と考えられるもの(アレルギー反応)
3:注射や針への恐怖心が原因で起きるもの(心因性の現象)
4:既に知られている副反応(薬剤情報として患者に渡されるリーフレットに記載されているもの)
5:ワクチン接種後に起きるまだ知られていない副反応(その時点で、疑わしい副反応として認識されていないもの)

 気絶やアレルギー反応など、接種直後に副反応が起きた場合は、接種を行ったschool nurseや医師(GP*など)がMHRAへ報告を行います。副反応がもっと後で起きて接種を受けた人が病気になった場合はGPへ行くので、そのGPが状況を評価してMHRAへ報告します。GPは患者の生涯にわたるカルテ(病歴など)を持っているはずです。 *GP(General Practitioner):かかりつけ医、ホームドクター
 MHRAはインシデントレポートを日々確認し、週報としてまとめます(これはその薬剤が使用されている限り、続けられます)。その時点で認識されていない副反応については(つまり、患者への情報としてリストになっていないもの)フォローアップとレビュー(検討会)が行われます。すなわち、HPVワクチンによる疑わしい副反応について、他のワクチンによる副反応として報告された件数と種類を比較します。また、HPVワクチンによる疑わしい副反応の発生率と、過去10年間に同じ年齢層において自然発生して観察された発生率とを比較し統計学的な分析を行います。
 現在、MHRAは慢性疲労症候群(CFS)、ギラン・バレー症候群、顔面神経麻痺、複合性局所疼痛症候群(CRPS)と脳炎について特に厳重に観察しているところです。 現時点では、これらの病気についてワクチン接種者についてそれぞれ報告された件数は、ワクチンを打たずに自然にこれらの病気が生じた件数と比較すると圧倒的に少ないです。例えば、英国で最初に子宮頸がん予防ワクチンが接種された年(サーバリックスが100万回使われました)には、CFSの自然発生率から推測して、ワクチン接種に偶然に伴ってCFSが発生する件数は少なくとも60件が予想されていましたが、実際に報告されたのは13件のみで、報告されなかったものがあったことを考慮に入れても、サーバリックスがCFSの発症の原因にはなっていない、と結論づけられました。ギラン・バレー症候群については、最新の報告によると、過去5年間で600万回使われた後で5件の報告がありました。この数字は偶然に発症したと考えられる数字よりもはるかに低いことと、150万回使われた過去1年半には1件も報告されていないことを考えると、ギラン・バレー症候群がサーバリックスと関連がある可能性は大変低いものとなります。
 それでも、ワクチンによって深刻な障害を負った(全身の少なくても60%以上)と考える人は、ワクチン・ダメージ・ペイメント・スキーム(ワクチンにより損害を負った場合の賠償のしくみ)に申し出ることができます。Vaccine Damages Pay Unitという部署がこの件について調査します。この申請が通らなかった場合、申請者は独立した裁判所(第三者)に再調査を申請することができます。申請が通った場合は、一時金として12万ポンドが支払われます。イギリスでの医療費は全て無料なので、この申請が認められても認められなくても、医療に関する費用は全て国によってカバーされます。

一覧へもどる