“子宮頸がん“啓発を推進する4団体 司会の今野 良(当会実行委員長)がメッセージを読み上げた後、各団体が活動を紹介。野田 起一郎(当会議長)が設立の意義を、鈴木 光明(当会実行委員)が活動の詳細を報告した。 |
野田 起一郎(議長 / 近畿大学前学長)
子宮頸がん征圧のためには、産婦人科の領域だけで考えていては物事は進みません。専門の枠を超えて、多くの医師、専門家、団体、企業が力を合わせて、子宮頸がんについて多面的な視点から討議し、社会・行政に向けた提言を行っていくために、2008年11月に当会が設立されました。この会は、子宮頸がん征圧のために各分野の専門家が連携した専門家集団であるという点が大きな特徴です。役員一覧をご覧いただくと、産婦人科医、小児科医、看護師、助産師、患者支援団体、子宮頸がん啓発を推進する市民団体の関係者などが委員として参加していることがおわかりいただけると思います。
この会では、子宮頸がんの予防、征圧をめざすために、2つの大きな短期目標を掲げています。
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検診受診率は先進国の間では最も低く、受診率を高めるにはどうしたらいいか、どういう検診が効率的か、討議してまいります。また、ワクチンでがんを予防できるというのは画期的なことです。我が国では未承認ですが、承認された後どういう形で使っていくか、公費負担をどうするか、課題は多くあります。この2つの目標達成のために戦略を練ってまいりますので、多方面の協力をお願いいたします。
鈴木 光明(実行委員/自治医科大学産科婦人科講座主任教授、日本産婦人科医会常務理事 がん部会)
日本では未承認ですが、HPVワクチンは子宮頸がんの発生原因となる13種のHPVのうち特に頻度の高い16型と18型のHPV感染を予防することができます。これにより約7割の子宮頸がんが予防できると考えられています。このワクチンはあくまでHPV感染を防ぐものですので、未感染者に接種することが望ましく、接種対象年齢は小学校6年生~中学校3年生(11歳~14歳)となります。接種年齢については、小児科医を含め現在協議中ですが、今後もさらに討議していきます。20代、あるいは30代、40代に対しても、ある程度の効果は期待できますので、追加接種対象についても、検討していきたいと考えています。
ワクチン接種が行われるようになっても、効果が結実するには、20~30年かかります。即効性という点では、検診が古くて新しいテーマです。
欧米先進国の子宮頸がん検診受診率は70~80%ですが、日本は23.7%。検診率の低さが長い間言われています。とくに、若い女性の子宮頸がんが3倍ほどに増加しており、その年代が受診しやすい環境整備が望まれます。予防医学への取り組みの推進、受診者側・医療側双方に対する検診のインセンティブの提供、さらに予算面の問題をどうするかという課題もあります。
女性たちへの啓発のために、委員たちが市民公開講座などさまざまなイベントを通して直接話をすることで、検診の重要性を訴えています。がん征圧月間の9月には、検診未体験の人を対象に検診デビューキャンペーンなども企画しています。
子宮頸がんは発生原因が明らかにされており、前がん病変(異形成)が存在します。早期発見に有効な検査方法として現在日本では細胞診が行われていますが、検診の精度管理も重要なテーマです。細胞診の前がん病変の発見率は現在70~80%で、2割程度の見落としがあります。欧米では、子宮頸がんの発生原因となるHPV感染の有無を調べる「HPV検査」も検診で実施するように推奨されています。これは、細胞診で採取した細胞を材料として、DNAレベルでハイリスク型のHPVを発見できる検査法です。細胞診と組み合わせることで検診の精度が高まります。日本の子宮頸がん検診の中にも組み込んでいくよう推進しています。
子宮頸がん検診の細胞診報告様式も、2009年4月より、世界標準であるベセスダシステム2001に準拠した「ベセスダシステム」(別称「医会分類」)に改定しています。
新しい報告様式のポイントは、以下の2つです。
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検診の精度管理をアップするため新しい検査方法を取り入れる、ワクチンの早期承認と公費負担、この2つの目標を達成するために専門家集団が一致団結して取り組んでまいりますので、ぜひ皆様もお力をお貸しください。子宮頸がんを征圧できる日が早く来ることを期待しています。
今野 良(自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授)
子宮頸がんは日本では毎年約15,000人の女性がかかり、約2,500人が死亡しています。その原因のほとんどがHPV感染であることが解明されています。HPVを発見したのはドイツのハラルド・ツア・ハウゼン博士で、その研究により、昨年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。
このウイルスには全女性の80%が感染しますが、検診によってがんになる前の段階で発見できることから、子宮頸がんは世界では予防できる疾患と理解されています。早期であれば治療後の妊娠・出産も可能です。 子宮頸がんについて正しい知識や情報を伝え、検診の受診率を上げることが大切です。患者さんの多くは症状が進行した段階で来院され、「検診を受けようという気持ちはなかった」とおっしゃいます。検診の有効性、重要性が認識されていないため、行動変容につながらないのです。
イギリスでは先日、末期の子宮頸がんであることを告白していたタレントのジェイド・グッディさんが、27歳で亡くなりました。ゴードン・ブラウン首相は、グッディさんが子宮頸がんに対する意識向上(検診受診率とワクチン接種率の向上)に尽力したことをたたえるとともに、彼女を励ますメッセージを発表していました。イギリスでは検診受診率は85%ですが、これらの呼びかけは、さらに多くの女性を検診受診とワクチン接種へ動かしています。
一方、オーストラリアでは、12~26歳の女性全員が無料でワクチンを接種できます。12歳の女子におけるワクチン接種は90%以上で、ごく普通のことになっています。
4月9日の「子宮の日」に向けて各団体がさまざまな啓発活動を展開するこのタイミングに共同メッセージを発表できたことは、とても意義のあることと考えます。検診受診率アップ、子宮頸がんの70%を減らせるHPVワクチンの早期承認と公費負担、そして患者さんには適切な医療を提供できる仕組みを作って行きたいと思います。今後も共同でメッセージを発表し、啓発を続けていきます。
他の三団体の活動報告NPO法人子宮頸がんを考える市民の会 社団法人ティール&ホワイトリボンプロジェクト 財団法人日本対がん協会 |