当会では、「子宮頸がん無料クーポンの利用状況」及び「子宮頸がん予防HPVワクチン接種の公費助成状況」について、9月全国1750市区町村対象に緊急アンケート調査を実施した。その調査結果を発表するとともに、地域での先進的な活動を紹介する緊急ワークショップを開催。自治体、メディア、国会議員・秘書、地方議員など、約70名が参加した。
野田 起一郎議長の挨拶に続き、鈴木 光明実行委員、今野 良実行委員長が調査結果を発表した。続いて公費による子宮頸がん予防HPVワクチン接種をすすめている栃木県大田原市と埼玉県志木市の事例を発表いただき、活発な質疑応答が行われた。今野実行委員長が最後に「2つの市の取り組みは、市長がリーダーシップと責任をとり、有効で安全なワクチンを提供しているという姿勢がある。さらに、担当者の熱意、やる気があり、綿密な計画を立てて戦略的に行っている例。きめ細かな情報提供と受診勧奨により不安を取り除いた。他のワクチンや検診にも反映されて受け継がれていけばいい。」と締めくくった。
子宮頸がん予防は、検診とワクチンが2本の柱。日本は諸外国に比べ検診受診率が低い。
今回のアンケートの有効回収率は 52.9%、自治体によってかなり差がみられる。
平成21年度クーポン利用率は全体で21.3%。20歳、25歳の若年女性の受診者数が4倍以上に増加、30-40歳でも2倍以上の増加となった。初回受診者も増えており、若い女性が検診の必要性を認識するよいきっかけになった。
平成22年度のクーポン事業継続率97.0%。クーポン利用促進のための新たな工夫では、「利用期間の延長」「土日、夜間検診の導入」等、きめ細かに行っている。
通常の子宮頸がん検診の実態では、毎年検診が53.3%、案内を受診者に直接送付しているが65.9%。これまでどのような方法でも検診受診者数が増えなかったが、クーポンは明らかに有効な方法であることが分かった。クーポンを継続した事業として定着させること、メディアを中心とした受診勧奨がこれからも重要だ。
新聞報道では、HPVワクチン公費助成を行っている・行う予定の自治体は284ヶ所(10月2日現在)。 今回のアンケートでは、子どものワクチンは小児保健担当課が行う場合が多いが、HPVワクチンはほとんど検診と同じがん対策の課が担当。がん予防ワクチンと位置づけられている。平成22年度にワクチン公費助成をしている自治体は16.3%。平成23年度は公費助成予定は27.0%と増加、一方、検討中という回答が多く、現在は国や周囲の自治体の動きを見ている状況。接種対象は、主に中学生で、それプラス小学生。助成金額は、平成22年度は全額助成64.8%。
主な自治体の接種状況は、集団(学校)接種の大田原市(栃木)では98.8%。個別接種の魚沼市(新潟)79.2%、志木市(埼玉)86.7%。湯沢町(新潟)は、保健センターで2日間限定で接種し91.8%。接種率を高くするためのポイントは、全額補助と適切な情報提供と啓発。
厚生労働省の概算要求積算案では接種率45%として150億円の予算で考えているが、仮に総予算が150億円と限定されるならより効率的なワクチン接種が望ましい。中学1年(など1学年)に限定し、薬剤料を価格交渉で値引(各国で行っていること)、自治体への補助を全額にすれば、1学年全員に接種可能。国の事業とすることで、日本全国で実施でき、経年的に確実な効果があり、モニタリング・効果判定が可能になる。
当初個別接種で検討していたが、市長から推進指示があり集団接種へ方向転換し、実現に向けて課題を協議した。事故賠償補償保険に該当するか、全員分のワクチンの確保は可能か、接種体制確立のための看護師の確保はできるか。医師会や、小学校長会や養護教諭部会長にも協力要請。養護教諭には事前アンケートも行った。
保護者や一般市民への理解促進のために、講演会(4月16日)、リーフレット作成等により、保護者への理解促進を行った。その後、中学生にも、個別接種により半額補助を決定。接種率は、小学6年生で1回目97.8%、2回目97.6%。中学生は1回目の接種率が58.4%で、思ったよりも高くないという結果だった。その他、マスコミの取材対応、自治体からの照会への対応、ワクチン接種への抗議等があった。ワクチンの納入方法と保管場所等の確認と徹底も必要だった。集団接種は高率の接種が可能で、保護者の負担軽減が図られる。集団接種推進のためには、医師会の協力、学校の理解・協力、諸条件の整備が大切。
又、がん検診等の受診率向上に向けた取り組みとしては、各地域の保健委員に市の健康づくりの状況を説明し、健診への理解のもとに検診申込書等を各戸に配布・回収して頂くなど、市民との協働により受診率向上に努力している。
志木市は、市長の政策マニフェストに子宮頸がんワクチンの接種を掲げていた。4月から全額公費負担で個別接種を実施。当初接種対象を10%と見込んで予算化していた。重要性を理解してもらうため、講演会で市職員、学校管理職、養護教諭に研修を行う。また、学校の保健室にパンフレットを置き、対象者には個別に案内を送付(チラシ、接種の注意点や副作用についての説明、接種カード、医療機関名簿などをセット)。 希望者は、医療機関に予約して、接種カード、被保険者証、母子健康手帳を持参して、必ず保護者同伴で接種してもらう。
6月に市民講座を実施。接種対象の母親世代中心に260名が参加し、正しい知識と理解が得られた。 接種率は、小学校6年と中学1年は40%程度、中学2年が52.4%。中学3年は期限が3月までなので、すでに86.7%が1回目の接種を済ませている。中学3年の100%接種を見込み、補正予算計上を行った。
全国の自治体からの問い合わせ、議員の視察、メディアの取材など問い合わがあった。市民からは、インフルエンザなど他の予防接種との接種間隔、接種カードの紛失、転入の方のカード発行、夜間・土日も接種できる医療機関等の問い合わせがあった。接種後の副作用などのトラブルについての相談は1件もなかった。
ワクチンの記録に関しては、健康管理システムにおいてデータ管理を実施。20歳時に子宮頸がん検診の勧奨を実施する予定。ワクチン接種者と非接種者の検診受診率、前がん病変・がん発生率などを調査し、将来のがん予防政策に貢献するデータとする。