世界最大の子宮頸がん学会・EUROGINと子宮頸がん啓発を推進する国際会議・WACC(Women Against Cervical Cancer)のフォーラムが、2012年7月8日~11日プラハで開催され、世界各国から1200人が集まった。子宮頸がんに関する最新の知見と啓発の状況、世界のさまざまな啓発へのアイデアなどに触れ、今後の日本での啓発活動に活かすため、当会議では一昨年・昨年に引き続き公募で選ばれた子宮頸がん啓発団体、メディア、細胞検査士とともにこの会議に参加した。
8月23日、世界の子宮頸がん検診とHPVワクチンの最新情報、それぞれの専門分野、それぞれの目線で見て聞いて感じたことなどをお伝えする報告会を開催。厚生労働省、自治体、議員、医療関係者、啓発団体、メディアなど、約80人が参加した。
冒頭、当会議議長の野田起一郎が「世界の趨勢がわかる子宮頸がん会議に、今回はアクティブな7人の女性たちに参加してもらった。子宮頸がん予防は近年急激に進歩している。この報告会を、お集まりの方々と世界の知見を共有する機会としたい」と挨拶した。
講演ではまず、EUROGIN2012で発表を行った今野 良(当会議実行委員長)がHPVワクチンやHPVに関するトピックスを報告し、欧米では子宮頸がん検診は細胞診から完全にHPV検診となり、より効率的な検診へ移行していると語った。
次に宮城悦子(委員)は、地方自治体や地域コミュニティ単位で取り組む予防対策が若年女性の意識と行動にどう効果を及ぼすかを検証するオーストラリアとの共同研究について発表。
30~55歳日本女性への意識調査を実施したシャロン・ハンリ(委員)は、ワクチンの受け入れには、費用のことや、予防接種は病気の予防に必要、自分がHPV感染する・子宮頸がんのリスクがあると意識させることが大切と報告。
小西 宏(委員)は、各国の検診の間隔、検診開始・終了年齢などを鑑み、検診やワクチンの効果的運用について論じた。
続いて,参加したメンバーたちが4日間で学んだことなどを、それぞれの目線・立場から発表。
MBS毎日放送の橋本佐与子さんは、帰国から10日後の7月24日のニュース番組「VOICE」(関西ローカル)で学会の内容や日本の取組みについて約5分間放送した映像を紹介しながら、エビデンスに基づく正しい情報が届くように継続して伝えたいとコメント。
ワクチンの質問をよく受ける「女子大生リボンムーブメント」の新井涼子さんは、ワクチン反対派に対する各国の取り組みに大きな関心を持つとともに、啓発対象に合わせた「情報の選別」「伝え方の工夫」の必要性を感じたと述べた。
コールリコールやHPV検査導入をサポートする「子宮頸がんを考える市民の会」の横田まい子さんは、子宮頸がんの知識がなくても検診やワクチンを受ければ罹らなくなるのでまず受診してもらうことが大切、健康管理意識の低い母親に育てられた子どもも意識が低くなるので母親世代の啓発を、と説いた。
スマートフォンなどを通じて健康情報を発信するサイバードの小村牧子さんは、HPV検査が普及していない今こそ正しい情報を広められるチャンスと考え取り組みたいと意欲を見せ、また働く女性の立場から企業での併用検診導入のメリットについても言及した。
乳がん体験者である研友企画出版の山下ちづるさんは、受診率アップがテーマの日本に対し、受診率が高い欧米では次の段階にすすみ、いかにして正確に早く「前がん病変」を発見してがんの発生を阻止するかが重要なテーマとなっていると報告。
シンガーソングライターで子宮頸がん体験者の松田陽子さんは、自身の体験から、欧米と比べて日本の受診率が低い一因として母娘の関係に注目、気軽に産婦人科を受診したり母娘で身体や健康について話せる環境がないことをあげた。
細胞検査士として25年以上のキャリアを持ち京都で受診率アップに取り組む加藤順子さんは、検診先進国にあって日本にないものとして、教育(特に学校教育)、コールリコール、登録制度の3つが大切であると語った。
最後に当会議から、現在対象学年の生徒は9月中に1回目の接種を終えないと今年度中に3回接種できないことを周知してほしいと参加メディアにお願いした。閉会後も発表者の周りには人だかりができ、活発に意見が交わされていた。
■開会挨拶
野田起一郎
(近畿大学前学長 /子宮頸がん征圧をめざす専門家会議議長)
■講演1 「EUROGIN2012&2012WACC Forumで発表・論議された
HPVワクチンやHPVに関するトピックスを紹介」
今野 良
(自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授 /子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長)
■講演2 「横浜・神奈川子宮頸がん予防プロジェクトから見た世界の子宮頸がん予防」
宮城悦子
(横浜市立大学附属病院化学療法センター長/子宮頸がん征圧をめざす専門家会議委員)
■講演3 「成人女性のHPVワクチンに対する認知と受容」
シャロン・ハンリ
(日本赤十字北海道看護大学准教授/子宮頸がん征圧をめざす専門家会議委員)
■講演4 「子宮頸がん予防 ワクチンと検診の効果的運用めざして」
小西 宏
(公益財団法人日本対がん協会マネジャー/子宮頸がん征圧をめざす専門家会議委員)
■EUROGIN2012&2012WACC Forum参加レポート
参加したメンバーたちが、4日間の学会・啓発会議で学んだこと、発見したこと、大事に思ったこと、
ぜひ日本の方々に伝えたいことを、それぞれの目線・立場から発表します。