「検診」と「ワクチン」のさらなる普及をめざす『子宮頸がん予防活動奨励賞』。第2回は10件の応募の中から、子宮頸がん予防(検診とワクチン)の目覚ましい成果がある、活動が実践的で啓発のモデルになりうる、多角的で他領域との連携がおこなわれている、一般の人々との良好なコミュニケーション・アプローチをとっている、正しい医学的知識に基づいた活動である、などを選考基準とし、以下の8団体の表彰を決定しました。
団体名(五十音順) | 主な活動と評価ポイント |
甲府市(山梨県) | ■HPV検査を取り入れた「グレードアップ検診」を試行的に実施 甲府市では、予防できるがん「子宮頸がん」征圧を目指し、ワクチン接種と検診の両面から積極的に取り組んでいる。 検診については、前がん病変検出精度の飛躍的向上と受診間隔の延長が期待できるHPV-DNA検査を、26才と31才の方に限定し、3年間試行的に実施。検診の名称も従来の子宮がん検診との差別化をはかるために「グレードアップ検診」とし、周知を図る。受診者に向けては、今後の検診間隔を把握していただくために、「子宮がん検診管理カード」を新たに導入し、自己管理の必要性を説明している。 子宮頸がん予防ワクチン接種については、国の緊急促進事業実施に先駆け、山梨県の助成を受ける中、平成22年8月より開始、高い接種率となっている。 |
下野市(栃木県) | ■施設検診・集団検診ともに液状細胞診とHPV併用検診を導入 平成24年度から、県下に先駆けてHPV-DNA併用検診による子宮頸がん検診を導入。細胞診の精度を上げるため、液状細胞診も取り入れている。また、医療機関における施設検診だけでなく、バスでの集団検診においても本格的に実施していることも特徴の一つである。 検診は無料で、対象年齢となる全ての市民に対して「がん検診受診券」を送付。イベント等で併用検診の周知・啓発に努めている。 併用検診を取り入れることで若年者の子宮頸がん検診への関心を喚起。母子保健事業においても啓発し、乳幼児や小学生を持つ親に対する周知に力を入れている。 ワクチン助成は、平成22年 6月に国の制度に先駆けて栃木県内で2番目に市単独事業として開始。地元の小山地区医師会の理解と協力を得て、個別接種で開始したのは県内初である。 |
名古屋市(愛知県) | ■日本一の医療都市をめざして「ワンコイン検診」でがん予防 「日本一の医療都市ナゴヤ」をめざして予防医療に力を入れる。その代表が、がん検診であり、6種類のがん検診につき、一律500円で受診できる「ワンコイン検診」を始めた。 検診普及のために、がん検診ガイドの全世帯配布、子宮がん検診実施医療機関の記載内容の充実、母子健康手帳への子宮頸がん検診の案内、保険会社や金融機関との連携によるがん検診の啓発に取り組む。 ワクチンは、国の助成に先駆け、市の独自事業として平成22年10月に全額助成を開始。接種について中学生本人に理解してもらうため、わかりやすく解説したパンフレットを作成し、中学校において配布を行った。 このほか、「名古屋市がん対策推進条例」の制定、がん相談・情報サロン「ピアネット」開設、がん検診精度管理委員会設置など、がん対策に精力的に取り組む。 |
徳島県産婦人科医会 | ■「いつでも」「どこでも」「同料金」。広域化により若年受診率アップ 徳島県は子宮がんによる死亡率が全国ワースト。徳島県産婦人科医会では、市町村と協議し、検診を受診しやすい環境づくりのため、年度末までの受診を可能にする「いつでも」、居住市町村以外の県内のどの検診機関でも受診できる「どこでも」、県内すべての住民が「同じ料金で」子宮がん検診を受診できる「広域化」を完成させ、平成21年度から実施した。 妊婦健診の受診に合わせ、子宮がん検診の受診を促す取り組みも行っている。 ワクチンについては、県医師会に働きかけて、ワクチン接種のより早期の助成開始や国の助成制度創設を求める請願書を徳島県議会に提出。国の公費負担が開始(平成22年12月から)される前の、同年10月から、中学3年生を対象に、本県単独での助成を開始した。平成24年3月末現在、本県における接種率は、85.4%。 |
日本臨床細胞学会新潟支部 | ■新潟県・市の検診システムに貢献、市民啓発にも尽力 新潟県の対策型検診においては従来法標本に不適標本が多く、検診施設によっては30%以上の不適標本率であるため、日本臨床細胞学会新潟支部はベセスダ2001の導入と普及の必要性を県に指摘。平成17年度はベセスダ方式の導入、平成19年度からベセスダ2001の導入、平成21年度から完全実施、平成23年からは従来の旧日母分類との併記を終了。また、政令指定都市の新潟市の検診体制の企画にも直接関与し、平成23年度から液状検体法が導入された。 学会に連動して市民公開講座を開催し、住民への啓発により検診受診率の向上をはかっている。今年度は市民公開講座に併設して、新潟県、新潟市と8自治体の協力を得てHPV検査併用子宮頸がん検診を実施した。 |
ワコール健康保険組合 | ■「お財布いらず」「お手軽」「会社との連携」で、高い受診率を実現 昭和57年より子宮頸がん検診費用を補助。現在、20歳以上の社員(被保険者)及び40歳以上の家族(但し配偶者は20歳以上)を対象に、年1回5,000円を支給。 全国の販売職の定期健診は、婦人科検診ができる検診機関だけを紹介し、健診の申し込み時に同時に申し込むことができるようにしている。受診率は約70%。 内勤社員の定期健診は事業所内での集団健診方式を原則としているため、子宮がん検診については、自ら病院や検診機関に行って受診したうえで事後の申請により補助金額を支給。受診者が少なかったため、子宮頸がん出張バス検診を実施したところ、受診率は一気に上昇。 ①“お財布いらず"、②“お手軽、便利" 、③会社との連携がポイント。 2010年度から、全女性社員(被保険者)及び12歳~45歳の家族を対象に、ワクチン接種に25,000円を支給。接種率向上のため、来年度より費用補助金額の増額を検討。 |
NPO法人ラサーナ | ■産婦人科をはじめ多くの診療科を巻き込み、群馬県女性の健康をサポート 「女性を元気に、美しい命を大切に」をモットーに、女性が元気であるための、からだ・こころ・社会環境の健康をサポート。群馬県高崎市を中心に啓発活動を行う。 小中学校などへの出張講座、病院内でのセミナー、東日本大震災チャリティも兼ねたイベント、三原じゅん子さんや仁科亜季子さんをゲストに迎えた市民公開講座、女子マラソン大会などを通じて、子宮頸がん予防を啓発している。マラソン大会では、群馬県内の産婦人科だけでなく、内科、小児科、整形外科、外科、歯科などに広く協力を呼びかけた。この活動の模様は、NHKでも紹介された。 今後、市民公開講座開催(年1~2回)、女子マラソン大会の開催(年1回)、出張講座開催(随時)、子宮頸がん検診受診率向上のための受診率調査を予定している。 |
リボンムーブメント | ■大学生の立場から同世代の女性に啓発、検診受診率が倍増 大学生による、女性特有の病気に関する正しい情報の普及・啓発を行う団体。検診受診率の向上推進、ワクチンの接種環境の向上活動に取り組む。 20代の子宮頸がん検診受診率が低いことから、平成22年度より受診率向上活動として豊島区と連携して検診無料クーポン券の利用率を上げる受診勧奨企画を実施。クーポン券の有効期間(6ヵ月間)のうち、配布されて4ヵ月時点でクーポン未使用の20歳の対象者に受診勧奨として、リボンムーブメントが制作した子宮頸がん啓発小冊子「Teal」と手書きメッセージを送付。受診率は前年度の約2倍となった。 平成24年度からは神奈川県横浜市、埼玉県さいたま市、東京都国立市とも連携を開始した。 今後は首都圏での活動を広げるだけでなく、リボンムーブメントが活動している各地域でもこの企画を展開予定。 |