私たちの身体には、自分と違うものを異物と認識し排除する働き(免疫力)があります。たとえばウイルスなどの異物(=抗原)が侵入すると、体内で抗体や異物を攻撃するリンパ球などを作って異物を排除します。また、その異物の特徴をリンパ球などが記憶して、再び同じ異物が侵入してきた時にすばやく抗体を作って排除します。
このしくみを利用したのが予防接種で、あらかじめワクチンを接種して抗原を記憶させ、抗原が侵入すると直ちに抗体を作って排除することによって感染を防ぎます。多くのワクチンは、毒性を弱めた、あるいは毒性をなくした病原体を抗原としています。
子宮頸がん予防ワクチンの場合は、病原体すなわち16型、18型のHPVそのものではなく、高度な遺伝子組み換え技術を使いHPVによく似た "偽16型、偽18型のHPV"を合成し、抗原として用いています。この偽16型、偽18型のHPVは中身(遺伝子)がないので感染力はなく、ワクチン接種によってHPV感染や子宮頸がんを引き起こすことはありません。体内では偽16型、偽18型のHPVを「HPV16型、18型が来た」と勘違いして抗体を作るため、その後の本物のHPV16型、18型の侵入を撃退し感染を防ぐことができるのです。
偽のHPV:HPVの殻だけの偽のウイルス。遺伝子を含まないので感染力はない。